E d u c a t i o n

Introduction

iGEM TSUKUBAは、前回プロジェクトからEducationの精度を高めるだけでなく、iGEM TSUKUBA自身をサイエンスの発信地として意識し、持続的な活動へのみちすじをEducation活動を通して開拓した。

iGEM TSUKUBAが行ったEducation

私たちはまず、iGEM TSUKUBAがEducationを通して実現したい、一番大きな目標を立てた。

大目標:「iGEM TSUKUBAが、団体として持続的であることで、継続的に合成生物学を広めていくことができる存在になること」

さらに、この大目標を達成するため、iGEM TSUKUBAが行ってきたEducationを見直した上で、以下の4つのアプローチを行った。


1.Place Based Community

2.Student Collaboration Network

3.Existing Connections

4.ルーブリック



これらの方針をのもと、私たちは、まず今までのEducationの活動内容を見直し、次に今後のEducationのビジョンや明確な目的を立てた。そして、立てた目標に沿った企画設計を行ない、最後に他の団体や企業と協力しながらEducationを実行した。これにより、地域での新たな関係性を構築することに成功し、企業や学校と手を取り合って、計画的にEducationを行うことができた。


以下、私たちが今回のプロジェクトで行ったEducationの記録である。

Objective

Objectiveでは、Educationの具体的な方針を決め、各Educationが実行されるまでの思考フローを記述する。

objective_構造_1.jpg

fig.1 Educationの具体的な方針を決め、各Educationが実行されるまでの思考フロー図)

背景:これまでのEducation活動

私たちiGEM TSUKUBAは、2022年に団体として発足してから、iGEM jamboree 2023 に初出場し、そこでsilver medalを獲得した。Education活動を積極的に企画してはいたものの、手探りで行なっていた部分が大きく、改善できる部分が複数あった。

例えば、これまでiGEM TSUKUBAが行なってきたEducationのほとんどは一回きりで終わってしまっており、継続的なコラボレーションが実現できていなかった。メンバーの出身校などを中心にEducationを開催していたので、遠い土地まで赴いてイベントを開催することも多く、継続的な開催には負担が大きすぎたのだ。加えてiGEM TSUKUBAに協力してくださるような新しい関係性を作りにくかったり、一回きりのイベント内容が参加者の印象に残りにくかったりといった問題点があり、合成生物学を広める機会やチャンスを活かすことができていなかったと思う。

また、そもそも iGEM TSUKUBA は新しい団体であるため、大学内・地域内での知名度が高くない。つくば市内の団体や企業とコミュニケーションをとる機会が少なく、私たちの団体の知名度や活動を知ってもらうための第一歩を踏み出せないままでいた。

そこで、今回大会では、iGEM TSUKUBAの今までのEducation活動を抜本的に見直し、問題点に直接アプローチできるような改善策を考えることにした。

大目標

Educationを実行する前に、私たちはまず、iGEM TSUKUBAがEducationを通して実現したい一番大きな目標を立てた。

「iGEM TSUKUBAが、団体として持続的であることで、継続的に合成生物学を広めていくことができる存在になること」

私たちiGEM TSUKUBAにも、Educationに協力してくださる関係者の方々にも、負担が少ないEducationの運営システムを常に考え、実行することで、自然と活動を継続することができるようにする。iGEM TSUKUBAはまだ結成してまもない団体であるため、大きな挑戦をするよりもまず、活動頻度や質を安定させ、周囲の方々に団体として認知していただくことが何より重要であると考えた。


大目標を決定したのち、それを達成するために必要な具体的な方針を決めていった。

Process

Educationの方針を決めるために、私たちは以下のflowに沿って考えを進め、新たな方針を打ちたてた。

【大目標:iGEM TSUKUBAが持続的なコミュニティとなること】

  • Approach 1:今までのEducationを見直し、それを改善する

    • Flow 1:今までのEducationを見直す

    • Flow 2:今までのEducationの良い点・悪い点を分類する

    • Flow 3:改善策を考える

    • Flow 4:良い点をいかす方法を考える

  • Approach 2:持続的なコミュニティを作るために、新しいことを行う

    • Flow 1:持続的なコミュニティを作るために、何ができるか考える

    • Flow 2:新たな方針を打ち立てる

  • Goal:最終的な方針の決定

Approach 1: Review and Revise Education

Flow 1 今までのEducationを見直す

iGEM TSUKUBAが2022年に結成してからおこなってきたEducationの傾向を分析した。

前回のプロジェクトでは、以下の8つのプログラムを行った。

  1. Poster presentation at Fukushima High School

  2. Education at Chiba Junior High School

  3. Education at SKIP Academy

  4. Education at Science Forum

  5. Education at GFEST

  6. Bio e cafe

  7. Tsuku・Koi

  8. NIS-Kazakhstan team collab Education

1, 2では、つくば市の位置する茨城県から県外への遠征を行い、プログラムを開催した。1. Poster presentation at Fukushima High School, 2. Education at Chiba Junior High SchoolのEducationは両方とも、メンバーの出身中学校・高校の先生方にご協力いただき実現した企画であった。 メンバーが持つ繋がりを大事にできたことは、とても良かった。中学校・高校でのイベントは、まだ結成してまもないチームである私たちを知ってもらうための第一歩となったし、将来教員を志すiGEM TSUKUBAのメンバーもいる中で、実際の学校現場で講義をさせていただける経験は貴重であった。 また、中学校・高校でのEducationの内容は、先生方と内容をよく相談した上で実施した。日本では、学習の進度が科目ごとに決まっているものの、学校によって多少進度の違いがある。イベントを行う対象の生徒が、今どこまで生物の知識を持っているかを把握した上で、必要な説明を加えることができたのは良い点であった。 しかし、県外の遠征ということもあり、交通費や経費など、メンバーにとって負担となる部分が多かったのも事実であった。


3, 4, 5, 6, 7は、全て筑波大学で開催した。筑波大学には、科学研究を行う団体が発表できるイベントや講演会が多数存在する。私たちは、そこで前回プロジェクトの研究テーマを発表したり、実験教室を開催したりした。 筑波大学内でのEducationには、iGEM TSUKUBAのメンバーが参加しやすいため、移動や経費のことを必要以上に考える必要がなく、イベント内容を充実させることだけに力を入れることができたのは良い点であった。 これらイベントは基本的に、学内の他の団体がすでに企画しているイベントに協力するという形であったため、中高生対象・留学生対象のように、Educationの対象が絞られていた企画が多かった。用意する教育資料の方針を決めやすいのは私たちにとって負担が少なく、良い点だったと言えるかもしれないが、iGEM TSUKUBAが自主的に開催するEducationであるとは言い切れない。 その点、5. Education at GFEST では、自分たちの研究テーマに関して、実験を交えながら中高生向けに合成生物学の初歩的な知識を伝えることができ、主体的に企画し・実行したイベントとしての経験を積むことができた。 また、筑波大学内のイベントを企画・運営している方々と面識を持ち、次回以降のEducationに繋げることができるのも、良いことであった。


他にも、全てのEducationで共通する事項が複数存在する。


1つ目は、前回のEducationの反省を、次回へとうまく活かすことができなかったことだ。 毎回のイベントが終了すると、チーム内ではそのイベントの反省を行う。毎回反省をすることで、イベントを冷静に見つめ直し、良かった点・改善点を洗い出すことができるのが、良い点である。しかしその一方で、毎回のイベント内容が異なるために、前回の反省点が次回のEducationに反映されていなかった。また、授業後に行うアンケートの内容も、毎回異なっていた。アンケートの各項目を十分吟味できておらず、回答が本当に実際の教育効果を反映したものであったか不明瞭であったため、反省を行う際にも、抽象的なフィードバックをするにとどまっていた。


2つ目は、狭いコミュニティ内でのEducationが多かったことだ。もちろん、メンバーの母校との繋がりや、筑波大学内の団体との繋がりをEducationに活かすことができたのは良いことだった。しかし、iGEM TSUKUBAが合成生物学を周囲に広める拠点となれるほどの、効率的な認知度の向上をあげることはできていなかった。合成生物学という分野、そして私たちの研究を知ってもらうには、もっと多くの人々に、私たちのことを知ってもらう必要がある。


以上が、今までのプロジェクトで行ったEducationを見直した結果である。

Flow 2 今までのEducationの良い点・悪い点を分類する

Flow 1で述べた、iGEM TSUKUBAの今までのEducationの反省の内容を、良い部分・改善できる部分の二つに分類した。

【良い部分

1.母校など、今私たちがすでに持っているつながりをEducationに生かそうとしている。

2.企画内容を、共同企画者とよく相談しながら、フレキシブルに決定している。

3.毎回の企画後に、振り返りをおこなっている。

4.毎回の授業後に、アンケートを実施している。

【改善できる部分】

1.つくばから遠い場所でのEducation。頻度が少なければ問題はないが、毎回これを行うことは、移動費や体力的な問題が生じ、メンバーへの負担が大きい。

2.Educationの反省の内容が、次のEducation企画に反映されにくいこと。内容の異なるEducationどうしであるため比較が難しく、Education自体がより良くなっているかわからない。

3.Educationのたびに、項目の異なる独自のアンケートを行っていたこと。質問への回答が、本当にその企画の効果や参加者の感想を反映できているかわからない。

Flow 3 改善策を考える

Flow 2にて、【改善できる部分】として述べた内容に関して、Flow 3ではその改善策を考える。Educationにマイナスの影響を及ぼしていた部分を改善することで、まずは欠点の少ないEducationに近づけることにした。


【改善できる部分 1への改善策】:今まで培ってきた外部との関係性も、継続的に大事にする!

遠方でのEducationは、iGEM TSUKUBAや合成生物学の存在を広く知ってもらうことができる貴重な機会である。これからも、今までのメンバーが培ってきた、iGEM TSUKUBAと、中学校・高校や企業との関係性を生かし、多様な舞台でのイベントを開催していきたい。

一方で、距離的な障壁があることで、関係者の方々とコミュニケーションが取りづらかったり、メンバーに多少の負担が生じたりという問題はある。そこで、今回のプロジェクトでは、思い切ってつくば市を拠点としたEducation活動へと移行する。筑波大学のホームタウンであるつくば市でのEducation活動を充実させることを一番に考えるとともに、今までに培ってきた関係性も活かし、遠方に赴いてのイベントの機会もいただいた。

つくば市を中心としたEducation活動に関しては、Approach 2 にて詳しく解説する。


【改善できる部分 2・3への改善策】:ルーブリックの作成

Educationを評価するための、iGEM TSUKUBA独自のルーブリックを作成する。ルーブリックは、主に二つの目標を達成するために使用する。一つ目は「iGEM TSUKUBAが目指すEducationの形を達成できるか」、二つ目は「合成生物学を普及させるために十分なEducationの形を達成できるか」を評価するためである。内容の異なるイベントどうしであっても、毎回の反省や自己評価において同じ指標を用いることで、今回の反省を次回に必ず活かすことができる。このようにして、毎回のEducationの完成度を向上させていきたいと考えた。

Flow 4 良い点をいかす方法を考える

Flow 2にて、【良い部分】として述べた内容に関しては、これからも継続することとした。

特に、【良い部分2】企画内容を、共同企画者とよく相談しながら、フレキシブルに決定しているに関しては、これからも変わらず続けていくことにした。

開催するイベントに参加する方々の属性があらかじめわかっている場合、ターゲットと共有しやすい話題をテーマにすることで、イベント中のコミュニケーションの量や広がりも大きく、良い影響を与えると思ったからだ。例えば、高校で合成生物学に関しての講義をする際は、高校が特にiGEM TSUKUBAに任せたい生物学の内容があれば事前にリサーチしたり、普段の授業で実験をする機会が少ない高校では実験作業を多く取り入れたりした。

私たちは、いち学生団体なので、知識や理論を一回のEducationで完全に習得させることは難しい。しかし、参加者の方々に寄り添い、参加者の方々の要望に添えるような内容の企画を作ることで、何か一つでも生物学についての面白い事実を持ち帰ってもらおうと思っている。知識の「種まき」役として、内容に先だったイベントではなく、参加者に先だったイベントを企画していきたい。

各イベントのテーマ決定の経緯については、企画それぞれの経緯がある。

後述する、各企画の詳細にてご覧になることができるのでぜひ参照して欲しい。

Approach 2: Initiate New Plan to Build the Community

iGEM TSUKUBAを持続的なコミュニティにするために、新しく何ができるかを考えた。 その結果、二つの方針が定まった。

【新しい取り組み1:Place Based Community】

Place Based Communityは、筑波大学が位置する茨城県つくば市を中心にしたEducation活動を行おうという取り組みである。具体的には、つくば市内・つくば市周辺の中学校・高校と連携したイベントを行なったり、つくば市内にあるイベントスペースでの企画を開催したりする。

特に、中学校・高校と連携したEducationには、力を入れた。現在、日本では、「高大連携」という一連の流れが推奨されている。高大連携とは、高校生が大学の授業を受ける、大学の教員が高等学校で講義を行う、またはインターネットを活用して講義を配信するなどして、高校生が大学レベルの教育や研究に触れる機会を増やすことを目的とした連携活動である。高校生は、高大連携のプログラムに参加し、大学の雰囲気を直接感じることによって、大学入学の際のイメージとの違いを減らしたり、学習意欲を向上させることができる。 しかし、この「高大連携」という活動は、大学の先生や研究者が主体で行われ、高校生に発信されているものが多い。もちろん、高校生のうちに大学の学習を体験できる機会があるのはとても良いことだ。なので、大学生が高校生と接することができる機会を作り、高校生の皆さんに大学の生活がどのようであるかを知ってもらいたいと考えた。 特に iGEM TSUKUBA は、大学に入学してすぐに研究を始めた学生が多いサークルである。その特性を活かして、「大学生が行う研究とは」、また、研究とは離れて、「大学生活はどのようなものか」を、身をもって伝えることができるだろう。高校生とより年齢の近い、大学生が生物学を伝えることで、高校生にとって研究活動や学問の世界が近いものに感じてくれると考えた。

一方で、大学生が高校生に生物学を伝えることには、複数のリスクもある。例えば、科学的根拠の十分さが担保されていない危険性があったり、大学生自身の学業とEducation活動両立の難しさがあったりする。そこで、科学的根拠の十分性についてはPIの先生や大学内の専門の先生を頼ったり、学業との両立に関しては、メンバー誰か一人に依存した企画作りをするのではなく、メンバーみんなで協力しながら作りあげていくようにすることで、そのデメリットを極限まで抑えることを意識した。

中学生・高校生に限らず、サイエンスコミュニケーションの主体が大学生であることは、非常に稀である。しかし私たちは、まだ専門的な事柄を学んでいる最中である私たちだからこそ、イベント参加者の皆さんと「一緒に考える」ことが可能であると思う。Place Based Communityでは、つくば市内のサイエンスコミュニケーションをiGEM TSUKUBAが促進したいという思いで活動する。

【新しい取り組み2:University Students Collaboration Network】

University Students Collaboration Networkは、筑波大学で精力的に活動する他の学生団体や、他大学で活動するiGEM teamと協力して、情報交換やイベント開催を行なっていくという方針である。

筑波大学内には、精力的に活動する学生団体が数多く存在する。iGEMと同じように、教育活動、対外発表、研究活動、地域交流を行っているサークルも多く存在するものの、筑波大学内ではこのような団体総士の交流の機会が少なく、お互いがどのような活動をしているのかあまり知らない。 そこで、iGEM TSUKUBA が中心となってそのような、いわば学術系サークルのコミュニティを新たに作る。これにより、イベント開催の機会や、人脈形成、イベント開催にあたってのノウハウの共有など、さまざまな場面でサークル内での協力関係が生まれることだろう。University Student Collaboration Networkがうまく機能すれば、コミュニティに人々が居続けることができるので、自然に持続的なコミュニティが生まれるようになることだろう。

加えて、従来も頻繁にmeet upを開催し情報交換を行っていたiGEM Japan CommunityにiGEM TSUKUBAも継続的に参加することで、他チームとインスピレーションを与え合う関係性を保ちたい。

最終的な方針の決定

以上のようなブレインストーミングをへて、私たちは、以下の4つの方針を打ち立てた。

1.Place based community

つくば市内の企業や学校とのコラボレーションを積極的に行うことで、地域内での団体の知名度や、地域のつながりを深める。

2.Student Collaboration Network

大学内や、日本のiGEM communityでの連携や情報交換を積極的に行う。学生同士で協力することで、活動する上での障壁を共有したり、有用な情報を得たりできる。

3.Existing Connections

新しい挑戦を行いつつも、これまでiGEM TSUKUBAのメンバーを経由して培ってきた関係者の方々との繋がりを大事にする。

また、全てのEducationに関わるものとして、自分たちが行ったEducation活動を具体的に振り返ることができるシステムを新たに作成した。

4.ルーブリック

異なるEducationの内容であっても、統一した評価ができる、iGEM TSUKUBA独自のルーブリックを作成した。毎回のEducationが終わった後に、そのイベントを自分たちや参加者の目線で評価する。良いところは継続し、悪いところをすぐに改善する、Educationの具体的なプランを立てることができる。

以下、本プロジェクトで行ったEducationイベントの詳細を述べたのち、ルーブリックの詳細についてもページ後方にて紹介する。

各論

1.Place Based community

つくば市内の企業や学校とのコラボレーションを積極的に行うことで、地域内での団体の知名度や、地域のつながりを深める。

  • SCIENCE & TECHNOLOGY PRE EVENT 2025
  • Science High School No.1
  • Let’s Try It Out Laboratory No.1
  • Science High School No.2
  • STEAM Japan Science High School
  • STEAM Japan Tsukuba City
  • Co-en
  • A High School in Tsuchiura City
  • Let’s Try It Out Laboratory No.2
Place Based community Details

Overview

つくば市内の企業や学校とのコラボレーションを積極的に行うことで、地域内での団体の知名度や、地域のつながりを深める。

  • SCIENCE & TECHNOLOGY PRE EVENT 2025

  • Science High School No.1

  • Let’s Try It Out Laboratory No.1

  • Science High School No.2

  • STEAM Japan Science High School

  • STEAM Japan Tsukuba City

  • Co-en

  • A High School in Tsuchiura City

  • Let’s Try It Out Laboratory No.2

SCIENCE & TECHNOLOGY PRE EVENT 2025

Theme: 合成生物学とiGEM TSUKUBAの紹介

SCIENCE  TECHNOLOGY PRE EVENT.jpg

Date: 12/Apr/2025

Participant: オンライン配信の視聴者

Elaboration:

本イベントは、つくば市で開催された SCIENCE & TECHNOLOGY PRE EVENT 2025 において、トークリレー形式で発表を行ったものである。つくば市は研究学園都市であり、AIST(産業技術総合研究所)、KEK(高エネルギー加速器研究機構)、NIMS(物質・材料研究機構)など多くの研究所がある。本イベントには、それらの研究機関も参加した。

私たちの発表では、まず「合成生物学とは何か」というテーマを説明した。合成生物学の学問的な成り立ちや特徴を紹介し、さらに応用可能性について述べた。合成生物学が医療、環境、産業などにどのように役立つかを、一般の人にも理解できるように説明した。

次に、国際的な合成生物学の大会である iGEM を紹介した。iGEMは学生が中心となって参加する大会であるが、単なるコンテストではなく、科学的成果を社会にどう活かすかを考える場であることを強調した。また、iGEMを通じて国際的なネットワークが広がり、新しい知識やアイデアが生まれることについても述べた。

さらに、私たち iGEM TSUKUBA の活動について紹介した。現在進行中の研究プロジェクトとして、AIを活用したタンパク質工学の研究に取り組んでいることを説明した。加えて、地域の学校での教育活動や、市民に向けたアウトリーチ活動についても紹介した。つくば市にある研究機関や地域社会との連携も行っていることを述べた。

最後に、私たちの活動は研究だけではなく、次世代育成や科学教育への貢献も重視していることを強調した。今回の発表を通じて、合成生物学の価値を幅広い観点から共有し、多くの人々が科学に関心を持つきっかけを作ることを目指した。

本イベントは YouTube および ニコニコ動画 にて生配信され、その後アーカイブとして公開された。誰でも自由に視聴可能であり、イベント後も継続的にアクセスされている。 当日の同時接続者数は 1,000人を超え、幅広い年齢層の視聴者が参加した。オンラインコメントも多数寄せられ、双方向性のあるコミュニケーションが実現した。

Summary:

本イベントを通じて、合成生物学の基礎から最先端の研究までをわかりやすく紹介することができ、一般市民にとって難解に思われがちな分野を身近に感じてもらう機会となった。また、iGEMおよびiGEM TSUKUBAの存在を広く社会に認知させることができ、地域発の国際的な活動としての価値を示すことができた。

特にアーカイブ配信により、イベント当日に参加できなかった人々にも継続的に情報を届けられる点が大きな成果である。これにより、単発のイベントに留まらず、「持続的な広報・教育活動の一環」 として機能している。

Material:

Science High School No.1

Theme: 生命の再定義および合成生物学について

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Date: 28/Apr/2025

Participant: 茨城県立つくばサイエンス高校の生徒 9人

Elaboration:

本講義は、つくばサイエンス高校の生物学に関心を持つ生徒を対象に、「合成生物学とは何か」そして「生命をどう定義し直すか」という二つのテーマで展開した。

講義の序盤では、多くの生徒が知らなかった「iGEM」を切り口に、合成生物学と遺伝子組換え技術が持つ可能性と、それがもたらす学術的、社会的価値について説明した。次に、本講義の核心である「生命の再定義」について、生徒同士で考えてもらう時間を設け、「恒常性」や「細胞」といった多角な視点から生命の定義を議論してもらうことで、これからの合成生物学の発展には、こうした根源的な問いが不可欠ということを実感してもらった。最後に、iGEM TSUKUBAの具体的な研究内容を紹介し、身近な世界を体系的に学ぶ高校での視点とは異なり、より専門的かつスケールの大きな課題に取り組む大学での研究の魅力と面白さを伝え、生徒たちの学習意欲を刺激するきっかけを与えた。

一方で、時間的制約とオンライン形式によって、他の教育機会と比較して生徒間でのディスカッション時間がわずかに少なかった。これによって生徒にとっては能動的な講義ではなく、やや受動的な知識の享受に留まった可能性もある。

Summary:

つくばサイエンス高校の生物学に関心を持つ生徒を対象に、「合成生物学とは何か」そして「生命をどう定義し直すか」という二つのテーマで展開した。私たちの活動であるiGEMを切り口に、「生命の再定義」について講義した。

50分という短い時間だったが、全体のペースの調整が良くでき、内容を効率的に伝えられたが、交流は少なく、次回からは能動的なアクティビティを取り入れたい。

Material:

Let’s Try It Out Laboratory No.1

Theme: 分類から考える生物

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Date: 13/Jul/2025

Participant: 5歳〜60代 6組

Elaboration:

 本イベントは、毎月開催されている「やってみる研究室」というイベントにゲストとして招待され企画したものである。参加者に自分なりの分類表を作ってもらい、分類学の基本的な考え方を知ってもらうことを目的とした。

 参加者にはまず自分が思う「生き物」の絵を描いてもらった。次に、用意した写真を生物と非生物に分けてもらった。写真にはクジラやキノコ、月、ロボットなどが含まれており、これらの作業を通して「生き物」の定義について考えを巡らした。続いてグループごとに生き物の写真を使って分類表を作成してもらった。大人と子供が混ざったグループ2つと大人のみのグループ1つの3グループで行った。最初は知識に基づいた分類が行われており、すべてのグループで同じような分類表が作られていた。いくつかの例を提示しつつ、生物の見た目や生態に注目して自由に分類をしてみるよう呼びかけたところ、グループごとに様々な分類表が作成された。その過程で「脚の定義とは何か」などの疑問が挙がっており、新たな気づきを生む機会を与えることができた。完成した分類表は発表してもらい、参加者同士で考えを共有した。最後には分類学の簡単な歴史を解説し、分類の基本は観察と比較であること、分類の方法は現在でも追及され続けていることを伝えた。

 幅広い年代の参加者が集まったが、作業自体は簡単なものであり、特に大人は知識にとらわれがちになっていたこともあり参加者同士で協力して分類表を作成することができた。イベント後は参加者とメンバーの間で分類学やiGEMの活動についての話題で交流があった。

Assessment:

Summary:

 今回のイベントでは分類を通して生物について改めて考える機会を提供することができた。話し合いが中心の活動だったが、参加者同士で活発に取り組めている様子だった。しかしイベントの進行においては、想定していた時間よりも少し延長するということがあったため余裕を持ったタイムスケジュールを組む必要があると感じた。

Material:

Science High School No.2

Theme: ステークホルダーとは何か, 考えることの重要性

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Date: 18/Jul/2025

Participant:

茨城県立サイエンス高等学校 科学技術科の生徒 約75人

Elaboration:

本講義は、「研究活動におけるステークホルダーの重要性とその候補選定に関する方法」を主題として実施した。

講義の導入として、まず研究を取り巻く多様な関係者を指す「ステークホルダー」の概念を教授した。その後、他のiGEMチームが過去に実際に行った研究事例を参照し、4人班でステークホルダーの候補を考察する演習を行った。まず、研究の核となる要素を決め、その要素と関わる人は誰か、そしてなぜ関わりがあるのかを「ロジックツリー」で整理した。この話し合いでは、班のメンバーが活発に意見を交わせるように、大きな模造紙を囲んで行った。その際、iGEMerがファシリテーターとして各班の監督をし、適宜助言を与えることで、生徒間の主体的な議論を促進した。さらに、「iGEM」や「合成生物学」についても享受することで、合成生物学を含む生物学の可能性について伝えた。また、講義後、アンケート調査を行い、生徒のステークホルダーに対する理解度を評価した。アンケート分析の結果、70.5%の生徒が「ステークホルダーを考えることの重要性」を深く理解できたことが確認された。この講義は、86.7%の生徒が高い満足度を示すなど、受講者の評価も高かった。

ステークホルダーの概念は研究のみならず、他の活動においても考慮すべき重要な概念であり、これについて考える機会を設けることで生徒の課題解決能力の向上が期待される。また、ステークホルダーを考える過程において、物事を多面的に捉える力も養われると考えられる。

Assessment:

Summary:

本講義は、「研究活動におけるステークホルダーの重要性とその候補選定に関する方法」を主題として実施した。

本講義を通じ、高校生にとって馴染みのない「ステークホルダー」という概念と、研究に対する多角的な視座の重要性を提示できた。iGEMerがファシリテーターとして介在した点は、生徒間の活発なコミュニケーションが誘発され、事後アンケートにおいても高い評価を獲得した。

しかし、50分という時間的な制約により、伝えられる情報量が限られたため、アンケートでは講義内容への肯定的な評価であった一方、講義のペース配分や内容の最適化については、改善の余地がみられた。

Material:

STEAM Japan Science High School

Theme: 小中学生の科学研究に対する指導・助言

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研究の最終発表の様子

Date: 29, 30/Jul/2025, 07, 18, 22/Aug/2025

Participant: 小学校5, 6年生と中学生の合わせて8名

Elaboration: このEducationは茨城県教育委員会と茨城県立つくばサイエンス高等学校、そしてSTEAM教育を推進する企業(株式会社Barbara Pool)とのコラボレーションによって企画されたものであり、iGEMのメンバーはメンターとして、小中学生の科学研究に対する指導・助言を行った。 全日程は夏季休業期間の5日間であり、1日目は子どもたちが自らの興味を深めながら先行事例を探す傍ら、子どもたちの話を聞いてアドバイスを行い、研究計画の立案を助けた。2日目は、子どもたちが計画した実験を行うために、材料、器具の準備、操作、記録の補助を行なった。3日目は、残りの実験を手伝いつつ、実験結果を整理するため、グラフの読み方・書き方や背景知識の解説を行なった。またメインレポートの作成において、子どもたちの言葉で研究内容を表現できるよう、アドバイスした。4日目は最終成果物の作成を助けた。最終成果物にはメインレポートと掲示物(ポスター)があり、主にPCの操作や色使い、文章表現の推敲の手助けをした。最終日である5日目は、研究内容をまとめたスライド作成と、その発表練習を手伝った。 児童生徒の積極性のおかげで、検証実験もそのまとめも完成度の高いものを仕上げることができた。何より、参加者である小中学生とは非常に親しい間柄になることができ、楽しい時間を過ごしてもらうことができた。一方で、子どもの研究とはいえそれを短期間で完結させることは非常に難しかった。我々自身もiGEMを通して短期間の研究を経験しているため、研究の全体像が分かっている分、アドバイスはしやすかった。しかし、年齢と個性に合わせた指導の難しさは、今回改めて実感した。 研究の補助を通して、子どもたちの研究に向かう姿勢やつまづいた箇所を観察することで学校での学習状況やどういったことに興味があるのかを知ることができた。また年齢に合わせた話し方、概念の噛み砕き方について特に学びが大きく、これは他のEducationに活かせる知見だと考えている。

Summary:

 STEAM教育を推進する企業と地元の高校が企画した5日間の研究応援プログラムに学生アシスタントとして参加し、小学生および中学生の子どもたちの研究活動の補助を行なった。計画、実験、考察、まとめの全ての段階において子どもたちが必要とするアドバイスを行い、最終成果物である論文、ポスター、スライドの完成を目指した。補助の中で、子どもたちの学習状況や興味、わかりやすい説明の特徴などを学ぶことができ、大きな学びを得ることができた。学生として、専門家や先生の間に入って子どもたちを支援することの大切さのヒントを得ることができた。

STEAM Japan Tsukuba City

Theme: つくば市在住の小中学生に向けた、研究者によるワークショップ

つくば市.jpg

ワークショップの様子

Date:17/Aug/2025

Participant:希望者の小中高生約80人

Elaboration:

つくば市(主催)・株式会社Barbara Pool (企画運営)のイベント「つくばSCIENCE DAY」において、9名の研究者の方が小中高生にワークショップを実施した。このイベントで、iGEM TSUKUBAのメンバー4人が大学生サポーターとして各プログラムの運営を支援した。 メンバーは、会場の設営やプログラムの進行の補助、参加者へのサポートなどを行った。具体的には、研究者がワークショップで用いた顕微鏡の操作補助や資料配布といったサポートのほか、研究者の手が回らない場面で参加者の質問に対応し、わかりやすい説明を提供した。  さらに、会場内にiGEM TSUKUBAの活動を紹介するブースを設営し、参加者やその保護者に向けて活動内容を紹介した。ブースでは複数のポスターを掲示し、活動内容を紹介するチラシを2種類用意してブースに立ち寄った人に配布した。  この活動を通じて、研究者と学生の中間的な存在として、参加者と研究者との橋渡し役として貢献することができた。また、会場へのiGEM TSUKUBAの紹介ブース設置によって、iGEM TSUKUBAの認知度の向上につながった。

Summary:

 研究者のワークショップを学生アシスタントとして手伝った。また、iGEM TSUKUBAのブースの設営を行い、ポスターやチラシの配布を通して紹介を行なった。ワークショップの手伝いを通して、今後のEducation activityの参考になる知見を得るとともに、チームの認知度の向上に寄与した。

Co-en

Theme:スケッチの科学 ~「見る」「知る」「描く」ってどういうこと?~

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Date:17/Aug/2025

Participant:大人(5人)、小学生(4人)

Elaboration:

つくば駅から徒歩6分の距離にあるアクティビティスペース「co-en」と共同で、小学生以上を対象としたEducationを行った。低年齢層から参加できるテーマとして、植物のスケッチを選定した。スケッチは現象の記載に際して重要な能力であり、また自然を観察する能力は科学全般において必要とされる。今回は「知っているつもり」をキーワードにして、観察およびスケッチの重要性を知る機会を提供した。

当日は日常に潜む「見たことはあるけど、よく知らないもの」を簡単に紹介したあと、参加者自身が自身の理解度を把握するため、実物を見ずに15分間、絵を描いてもらった。今回の画題は、誰もが知っている植物かつ季節的に入手しやすいヒマワリを選定した。

その後、iGEM TSUKUBAのメンバーからスケッチの書き方について「大きく描くこと」「部分図を描いてもよいこと」「線が途切れないように描くこと」「キャプションを書いてもよいこと」を紹介し、実際にヒマワリを見てもらった。3分ほど観察の時間を設けたあと、実物を見ながら35分間スケッチをしてもらった。特に、見ないで描いたときに分からないと感じたところを重点的に観察するように伝えた。また、自由に解剖してもよいことを伝えた。

最後に、観察する能力は科学全般に必要なものであり、科学に対する誤解を防ぐことが出来るものだという紹介をして、Educationを終了した。終了後、アンケートを実施した。

小学生を対象としたEducationとして設定したが、予想以上に大人の参加者が集まった。しかし大人も含めて熱心にスケッチを行っており、活動的なEducationとなった。スケッチをするということ自体は広い年齢層で実施することが出来るため、テーマとして非常に優秀であることに気づいた。また、事前に実物を見ないで描いてもらうことで、自分の理解度を確認することが出来る点もよかった。また実施に際して、co-enとの連絡や資料作り、ヒマワリの準備などの仕事を明確に分担して実行した結果、作業に混乱をきたさず完遂することが出来た。

全体として1時間半の枠が設定されていたため、スケッチの時間に限りがあった。アンケートにも「もう少しスケッチの時間があればよかった」という意見が書かれていた。満足なスケッチを描くには時間がかかるため、今後実施するときは注意する必要があると感じた。

Assessment:

Summary:

1時間半という限られた時間ではあったが、参加者、実施者ともに満足度の高い良いEducationとなった。参加者はときどき意見を交流しつつ、集中してスケッチに取り組めていた。

事前準備も手際よく行えた。参加者募集のためのSNS運営については、更新頻度が低く、改善の余地があると感じた。リハーサル風景や情報の告知以外にも、リマインドとして複数回告知をすることが改善策として挙げられた。

また実施時間について、スケッチは非常に時間がかかるため、短時間で実施するには不向きであることが分かった。一方で、すべての参加者が満足するような時間を取ることは難しいと感じ、全体の進行も考慮したうえで、適切な時間を設定することが必要だと感じた。

Material:

A High School in Tsuchiura City (Ibaraki Prefecture)

Theme: PCRによる食用肉の種類判別とPCR技術の応用

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Date: 25-27/Aug/2025

Participant: 高校生 14人

Elaboration:

2025年8月25日から27日の3日間にわたり、茨城県土浦市内のとある高校の生徒を対象に、生命科学の基盤技術であるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いた実験ワークショップを実施した。 本ワークショップでは、スーパーマーケット等で手に入る牛肉、豚肉、鶏肉を題材とし、生徒たちが自ら実験者となって未知の肉サンプルの正体をDNAレベルで突き止める探究活動を行った。

  • 1日目: 団体紹介と実験全体の概要説明後、マイクロピペットの正確な使用方法を習得するための実習を行った。

  • 2日目: 各自が選んだ肉サンプルからDNAを抽出し、PCR法を用いて種の識別に利用される特定のDNA領域(ミトコンドリアCOI遺伝子)を増幅する作業を行った。

  • 3日目: 増幅したDNAをアガロースゲル電気泳動で分離し、UV光を照射してDNAの「バンド」として可視化・観察した。得られた結果から未知肉の正体を考察した。最後にPCR法の多様な応用例(食品偽装検知、新型コロナウイルス診断、環境DNA調査など)について学んだ。

本ワークショップを通じて、参加した生徒はマイクロピペットの精密な操作、試料からのDNA抽出、PCR反応の準備、そしてアガロースゲル電気泳動といった一連の高度な実験技術を、実践を通して体系的に習得することができた 。さらに、PCR反応における熱変性・アニーリング・伸長という各温度ステップが、DNA二重らせんの物理的性質やDNAポリメラーゼの酵素的機能とどのように連動しているのかを、自らの実験操作と目に見える結果とを結びつけることで、座学だけでは理解できない体系的な学びとなった。そして何より、自ら立てた仮説が、実験という客観的なプロセスを経てデータによって証明されるという経験は、科学的な思考様式の基礎を養う上で極めて有効だった。予想通りの結果を得られた際の達成感は、生徒たちの知的好奇心と今後のさらなる探究への意欲を大いに刺激したのではないかと思われる。

Assessment:

Summary:

総括すると、この3日間のワークショップは、高校生にとって身近な「食肉」という題材を効果的に用いることで、現代生命科学の核心に迫る本格的な探究活動へと自然に導く、教育的効果の高いプログラムだった。「未知のサンプルの正体を突き止める」という、まるで探偵のような明確で魅力的なゴールを設定したことにより、生徒の知的好奇心と学習意欲を終始高く維持することに成功した。また、単なる知識の伝達に終わらず、仮説の設定から実験計画、データ取得、そして結果の解釈と考察という、科学者が実際に行う研究プロセスを一貫して主体的に経験させたことは、生徒にとって何より価値のある学びとなった。最終日に、自分たちの実験が食品偽装問題の解決や医療診断といった現実社会の課題に直接繋がっていることを示したことは、科学の有用性を実感させ、学びを深化させる上で決定的な役割を果たした。この経験は、科学をより「自分ごと」として捉え、将知識、技術、科学的思考力、そして探究心を総合的に育む、非常に完成度の高い教育プログラムであったと結論づける。

Material:

Yattemiru Kenkyushitsu No.2

Theme: スライムを用いた対照実験の概念の把握

Date: 18/Oct/2025

Participant: Coming Soon!!!

Elaboration:

どのような材料を、どのくらい入れると、どんなスライムができる?スライム作りを通して、対照実験の考え方を身につけよう!

スライムを題材に、科学実験の基礎である「対照実験」の考え方を体験できるイベントです。まずは洗濯のりとホウ砂、水を混ぜて、誰でも簡単にできる基本のスライムをみんなで作ります。その後は、身近な材料を加えたり、量を変えたりして、どんな違いが生まれるのかを実際に観察しながら実験します。最後は、自分たちのスライムを持ち寄り、一番よく伸びるスライムを決めるコンペティションを開催。

科学実験と同じように、条件をひとつずつ変えながら、伸びるスライムの特徴を参加者みんなで見つけます。遊びと実験を融合させた体験型ワークショップです。

2.Student Collaboration Network

大学内や、日本のiGEM communityでの連携や情報交換を積極的に行う。学生同士で協力することで、活動する上での障壁を共有したり、有用な情報を得たりできる。

  • Kids University
  • GFEST
  • iGEM TSUKUBA Freshman
  • ARATA
Student Collaboration Network Details

Overview

大学内や、日本のiGEM communityでの連携や情報交換を積極的に行う。学生同士で協力することで、活動する上での障壁を共有したり、有用な情報を得たりできる。

  • Kids University

  • GFEST

  • iGEM TSUKUBA Freshman

  • ARATA

Kids University

Theme: 微生物と我々の生活, 歴史, 実際の観察およびワークショップ

キッズユニバーシティ写真 wiki.png

Date: 21/Apr/2024

Participant: 筑波大学科学技術週間「キッズユニバーシティ」の参加者。主に小学校低学年や未就学児とその保護者

Elaboration:

筑波大学のサイエンスカフェを運営する「バイオeカフェ」と我々「iGEM TSUKUBA」の協同企画として、キッズユニバーシティに参加した。サイエンスに関連したふたつの団体が協力して作る企画で、これから実施していく学生同士の協力企画の先駆けとなる活動となった。

この企画では3つのブースが設置された。

1つは「My 最強の微生物を作ろう」である。未就学児から小学校低学年を対象とし、用紙と筆記用具を用いて自由に微生物の絵を描いてもらった。

2つ目は「ポスター発表」である。小学生から大人を対象とし、「生活に潜む滅菌・除菌・殺菌・抗菌」や「大腸菌の歴史」など、微生物に関するポスターを展示した。

3つ目は「顕微鏡で微生物を見てみよう!」である。幅広い層を対象とし、酵母、納豆菌、乳酸菌などを実際に顕微鏡で観察する機会を提供した。

全体として約100名が来場し、参加者へのiGEMの認知度向上に繋がるなど、成功を収めた。「My 最強の微生物」は未就学児に、「ポスター発表」は親世代に特に人気であり、iGEM TSUKUBAが企画を作る際に想定した対象の年齢層に実際に楽しんでもらえたことがよかった。顕微鏡観察は親子での参加者が一緒に楽しんでもらえる企画となり、「菌とは何か?」について視覚的に体験できる機会を提供することができた。

一方で、小学校高学年から中学生までの参加者にとっては、内容が簡単すぎたという反省点もある。広い年齢を対象にする企画を作るのは難しいが、アクティビティも、ただ体験してもらうだけでなく詳しい解説をつけるなど、参加者皆さんに楽しんでもらえるよう工夫したい。

Summary:

 筑波大学「バイオeカフェ」と「iGEM TSUKUBA」の協同企画としてキッズユニバーシティに参加した。微生物をテーマとした作画、ポスター発表、顕微鏡観察の3つの企画を実施し、約100名の親子連れを中心に盛況であった。参加者からは概ね好評を得たが、一部の年齢層への訴求力や、当日の運営管理には改善の余地があった。

Material:

GFEST

Theme: 遺伝子組換え技術について

Date: 06,07/Aug/2024

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Participant: GFEST受講生(中学3年生〜高校3年生)

Elaboration:

本企画では、GFEST(筑波大学が主催する中学・高校生向けの科学人材育成プログラム)の受講生に対して、合成生物学や遺伝子工学に関わる内容で講義・実験を行った。昨年に引き続き、GFESTへの参加の機会をいただき、中学生・高校生と実験を行うことができた。

1日目は遺伝子組換え技術の重要性と法的側面についてスライド資料を用いた講義と、大腸菌でのGFP発現実験の流れを模擬的に行った。マイクロピペットの正しい使い方やコンタミネーション防止などの注意点を説明し、グループで大腸菌の形質転換実験の流れを体験してもらった。生徒の皆さんには、形質転換に使われる試薬は使わせず、代わりの試薬を用意したため、遺伝子組み換え実験の流れと手技のみを行い、その後Wetメンバーが管理された実験室にて実際の遺伝子組み換え実験を行った。この実験では、GFP遺伝子とアンピシリン耐性遺伝子を含むベクターを用いて大腸菌を形質転換し、アンピシリンによるセレクションを行った。

2日目は培養した大腸菌のコロニーを観察して結果と考察をまとめてもらった。その後、UniProtとAlphaFold3の使い方を解説し、興味のあるタンパク質の構造を検索したのち、配列情報からタンパク質の立体構造を予測する方法とその意義を体験させた。

マイクロピペットの操作や、プレートへ大腸菌を撒くことなど、大学レベルでの実験操作を模擬的に体験する機会を提供することができ、参加者の満足度は高かった。ただし、中高生にとって難易度の高い実験であったため、実験理論を完全に理解してもらえなかった部分があった。また、事前準備が遅れたことは次回に向けての反省点である。

Summary:

GFEST(筑波大学が主催する中学・高校生向けの科学人材育成プログラム)の受講生に対して、合成生物学や遺伝子工学に関わる内容で講義・実験を行った。マイクロピペットの操作や、プレートへ大腸菌を撒くことなど、大学レベルでの実験操作を体験する機会を提供することができたので、参加者の満足度は高かった。ただし、中高生にとって難易度の高い実験であったため、実験の誘導や事前準備等で改善点が見られた。

Material:

iGEM TSUKUBA Freshman

Theme: iGEMerのための生物学

Date: May-Aug/2025

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Participant: iGEM TSUKUBA Wet班の新入生5名

Elaboration:

iGEMでの活動に必要となる生物学の分野(分子生物学、細胞生物学、遺伝学など)の解説資料を作成し、2025年度のWet班新入生に複数日程で輪読をさせた。また、輪読によって生じた疑問や理解しきれなかった内容に対して講義形式での追加解説を行った。内容は高校生物履修者のレベルに合わせて行い、遺伝学の基礎の復習から始めた。その後、遺伝子の相同性や実験モデルの内容を解説し、最終的に遺伝子組換えに関わる大腸菌や組換えツール、PCR法といった内容を扱った。難解なツールや現象に対しては独自のイラストによって視覚的補助を促し、資料の作成と解説には実験に携わるWet班のメンバーとともに行った。コラムを追加することによって親しみやすい資料になることを意識して作成を行った。

取り扱った内容を以下に記載する。

  1. 遺伝学の基礎

  2. 遺伝子組換え

  3. PCR法

  4. ゲノム編集

  5. 解析手法

  6. カルタヘナ法と遺伝子組換え

Wet班の新入生は合成生物学やiGEMに関わる生命現象や組換えツールの原理を理解してもらえたと感じている。また、興味を持って個人的にインターネット等で調べ学習を行ってくれた参加者も存在した。これによってiGEM求められる専門的な内容を理解し、本プロジェクトへのスムーズな合流を促進した。また、今後新入生が行うiGEMの活動の助けとなった。一方で、物理・化学で入学した新入生には内容が難しくより基礎的な内容からの資料やプログラムの必要性を実感した。また、全ての現象や技術に対してイラストを導入できなかったことも改善点である。

Summary:

iGEM TSUKUBAの2025年度新入生に対して分子生物学や遺伝子工学に関する教育を行った。参加者に対して資料に加えて講義による解説を行い、合成生物学やiGEMに必要な現象や技術の原理を理解するきっかけとなった。手探りでの学習になりがちな新入生に対して基礎的な知識を与え、プロジェクトへのスムーズな合流を助けることができた。

ARATA(学術系情報交換会)

Theme: 筑波大学内外の学術系団体の交流の促進

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Date: 27/Sep/2025

Participant: 筑波大学内で活動する7つの学術系団体、主につくば市内で活動する企業様・個人様(合計32人)

Elaboration:

ARATA(学術系情報交換会)では、iGEM TSUKUBAが企画者となり、学内・学外の方を集めた交流会を行った。

筑波大学には、多様な分野で精力的に活動する学術系団体が多数存在する。これらの団体は、教育活動・研究活動・大会出場・イベント開催など多岐にわたる取り組みを行っている。しかし、このような各団体の多方面での活動がある一方で、筑波大学内での団体同士の交流の機会が少ないという背景があった。

そこで、研究・教育・大会出場を行う団体であるiGEM TSUKUBAが企画者となり、主に教育活動・研究活動・対外発表を行なっている学術系団体を中心とし、企業も招いた交流会を開催することとした。

交流会には、筑波大学内で主に教育活動・研究活動・対外発表を行なっている学生団体を7団体と、主につくば市内で活動する企業様や個人様をお呼びし、合計32名にご来場いただいた。少人数での机での交流や、会場を広く使った自由交流を通して、お互いの団体の活動内容や目標、日々の活動の中で得た知見を共有することを目的としており、団体運営や資金獲得の方法、教育活動の工夫、つくば市内での人脈共有、コラボレーションのきっかけ作りなど、団体にとって有益な情報交換の場となることを目指した。

加えて、この取り組みは、iGEM TSUKUBAが持続的な活動を行うために、まずは周囲の団体に活動内容を知ってもらうことや、「合成生物学」や「遺伝子工学」に関して知識のない方々に、そのイメージを持ってもらうことを目指した会でもあった。

交流会当日は、参加者が各机でドリンクとお菓子をつまみながら談笑し、良い雰囲気で各々の経歴や活動について語り合う様子が見られた。今まで交流のなかった団体同士が集まる中で、今まで知らなかったコラボイベントの可能性や、他の団体に対し「そんな活動をしているなんて、知らなかった」という声が多く上がり、交流会の需要が大きいことを感じた。

iGEM TSUKUBAとしては、研究の内容だけでなく、教育活動やweb開発を行っていることをアピールでき、他団体に新しい側面を印象付けることができたのが良い点であった。

一方で、初めて交流会を企画したということもあり、集まった学生団体が7団体と少なく、団体同士が共通の話題について深く話すことはできなかったのは、改善点である。次回以降は参加する団体の幅に厚みを持たせ、団体同士がより密な会話ができるような会を目指す。

将来的には、この交流会を複数回開催し、学術系団体・企業が常に相互に連携できる地域コミュニティを形成することを目指している。そして、iGEM TSUKUBAだけでなく、コミュニティの参加するすべての団体のアピールの場になることを目指している。

Assessment:

Summary:

筑波大学内で活動する7つの学術系団体と、主につくば市内で活動する企業様・個人様をお呼びし、お互いの活動を紹介する交流会を行った。交流は和やかな雰囲気で進み、初めて出会う団体同士の会話やコラボレーションのきっかけを提供することができた。iGEM TSUKUBAとしても、研究だけでなく、教育活動やweb開発の活動をしていることをアピールでき、周囲の団体に新たな一面を知ってもらえたことで、「iGEM TSUKUBAを持続的な団体にする」というEducationの大目標に近づくことができた。

3.Existing Connections

新しい挑戦を行いつつも、これまでiGEM TSUKUBAのメンバーを経由して培ってきた関係者の方々との繋がりを大事にする。

  • Fukushima high School
  • Toyo University Keihoku High School No.1
  • Science Connect
  • Toyo University Keihoku High School No.2
  • Koshigaya Kita High School
  • Science Frontier High School
Existing Connections Details

Overview

新しい挑戦を行いつつも、これまでiGEM TSUKUBAのメンバーを経由して培ってきた関係者の方々との繋がりを大事にする。

  • Fukushima high School

  • Toyo University Keihoku High School No.1

  • Science Connect

  • Toyo University Keihoku High School No.2

  • Koshigaya Kita High School

  • Science Frontier High School

Fukushima High School

Theme: タンパク質言語モデルによるルビスコ改良(当初研究案)

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Date: 22/Feb/2024

Participant: 福島高校の2学年、1学年の生徒、先生方、外部の大学教授、大学生

Elaboration:

福島高校の令和5年度SSH生徒研究発表会へ参加した。本発表会は福島高校の生徒、教員、そして外部の大学教授、大学生等、500人を超える多くの参加者が参加する大規模な発表会である。我々iGEM TSUKUBAは昨年度と今年度の2テーマについて、発表および質疑応答を行った。テーマの内容は「タンパク質言語モデルによる作物応用に適したルビスコの創出」、「合成生物学を用いた海洋生物付着阻害物質の生合成」であった。

多くの生徒、教員に我々の研究テーマ、研究成果を発表し、質疑応答を繰り返す中で、様々な観点で良いEducationとなった。高校生の生物学への関心の高まりはその最も大きな成果のひとつだろう。福島高校はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されており、もともと生徒の科学に対する関心は高かった。そこで、我々の発表を聞いた高校生は、普段の授業で学ぶ知識としての科学ではなく、問題解決に対する科学研究の重要性に気づいていたようだった。事後アンケートでも、創造性豊かな問題解決の科学的なアイデアが多くみられた。

今回のEducationは、我々にとっても多くのフィードバックが得られる場となった。教員や大学教授から研究手法やテーマについて具体的なアドバイスをもらい、研究テーマについて、より深く内容を考えるきっかけとなった。また、高校生に大学レベルの研究内容を伝える際に、どのように伝えれば分かりやすいか?をとことん突き詰めることができた。ポスターに多くの図や写真を用いるなどの工夫を凝らし、高校生にも分かりやすい発表ができたと考えている。事後アンケートでも、分かりやすかったとの声が多かった。今回の「分かりやすさ」を追求した発表は、今後のEducationなど様々な場面で活かされるだろう。

発表内容に関しても、ポジティブな意見をもらえることが多く、高校生や一般の方々にとっても、我々の研究テーマが社会的な意義があると共通認識を得られたことは大きな自信となった。

Summary:

高校生の科学、生物学への関心を高め、問題解決のための科学的なアプローチの重要性を知ってもらうことができた。iGEM TSUKUBAにとっても、生徒や教員からの質問を通して研究内容についてより深く考えるきっかけとなった。さらに、「分かりやすさ」を追求した発表を意識したことにより、今後のEducationや発表に活かせるスキルを充実させることもできた。

Material:

  1. 生物にあまりふれたことが無い人にも興味を持ってもらえるようなポスターを作成した。

Toyo University Keihoku High School No.1

Theme: 東洋大学京北高校における、遺伝子組換え実験講習 第一回

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Date: 04/Sep/2024

Participant: 東洋大学京北高校高等学校1.2年生の希望者(7人)

Elaboration:

今回のEducationは、普通科高校の生徒に対して、遺伝子組換えに関する講義を行った後に、実際に簡単な遺伝子組換え実験を行ってもらい、遺伝子組換えに対する理解を深めてもらうことを目的としている。

遺伝子組換えは、近年発展がめざましい研究分野であり、生物学における様々な研究で利用される重要な存在であると同時に、iGEMの研究においても主要な研究手法の一つである。一方で、世間の遺伝子組換えへの認識の中には誤った者も多く、実際に遺伝子組換えに触れ合う機会は少ないといえる。

全5回のカリキュラムとなっており、第1回では、遺伝子組換えの概要とその背景に関する講義を、第2回では遺伝子組換え実験に必要な実験器具の操作方法を、第3回は特別講義として筑波大学見学と遺伝子組換え植物研究の施設見学を、第4回は大腸菌を用いた遺伝子組換え実験を、第5回では実験結果の観察とふりかえりを行う予定である。

初回である本Educationでは、我々iGEM TSUKUBAの自己紹介と、遺伝子組換えがどのような技術であるのかの講義を行った。講義内容としては遺伝子組換えそのものの内容に加え、なぜ遺伝子組換えが有用なのか、遺伝子組換え実験に関する法規制にはどんなものがあるかなどを取り扱い、生徒が遺伝子組換えをただの一実験としてでなく、一つの社会的なコンテンツとして認識できるよう意識した。

1回目の授業では遺伝子組み換えの概要とその背景に関する講義を行った。その結果、以下2点の課題と改善点が見つかった。

1点目は、知識者相手、一般人相手、教育対象向けに作る資料を作っている目的をしっかり意識すべきだということだ。例えば、「ベクター」という言葉は一般的に知られていないが、本当に高校生向けのスライドに適しているのか。生徒はスライドのイラストや文字情報を目で追っているので、たとえ話し言葉が優しくてもスライドの内容に疑問があると、その時点で理解が止まってしまう場合が多い。スライドと話し言葉のレベルを合わせ、話し言葉とスライドが互いに理解度を向上させるような仕組みを作るべきである。

2点目は、スライドの構成に関してだ。同じ内容を伝えたいとしても、対象によって興味を持ってもらいたい箇所は違うはずである。過去に使用したスライドをそのまま使うのではなく、毎回対象に合わせて作り替えるのが良い。加えて、スライドを印刷しただけでなく、書き込みや穴埋めができる手元資料があると、生徒の達成感も上がるし、理解度や受講姿勢もよい方向に進むと考えられる。スライドの作成者やチーム内だけでなく、外部の先生や普段一般人相手にお話しされる方にスライドを確認してもらうことも視野に入れる。

Summary:

全体の手応えは十分なものだった。ただし、今回は講義がメインだったので、生徒の理解度や、その理解の定着がどれほどの者だったのかを判断する尺度が少なかった。また希望者を募っての開催にも関わらず、講義しかできなかったため満足度が低かった可能性がある。一方で初対面の生徒が多いかつ、講義がメインだったことを考慮すれば生徒のリアクションもよく、難易度設定は概ね正しかったと考えられる。今後はより満足度を高めるために講義のみではない企画を立案していく必要がある。

Material:

Science connect

Theme: AlphaFold・PyMOLの体験とAI×合成生物学

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Date: 25/Aug/2024

Participant: サイエンスコネクトの来場者

Elaboration:

今回の教育イベントでは、私たちのプロジェクトの主軸であるAIと合成生物学の面白さを知ってもらうことを目指した。特に、コンピュータを使ったシミュレーションやAI技術が、生物学の世界でどのように役立っているかを伝えることに意識した。

イベントは大きく二つの内容で構成した。一つは、AIと合成生物学の可能性について知ってもらうポスター発表である。学生から大人まで、様々な年代の方が楽しめるよう、専門用語をなくし、できるだけ分かりやすく簡潔に説明することを心がけた。もう一つは、実際にソフトウェアを触ってもらう体験である。ここでは、AIでタンパク質の形を予測するAlphaFoldと、その形を立体的に観察できるPyMOLを使い、GFPを観察してもらった。

このイベントを通して、普段科学を学んでいない人々にとって科学へのハードルを下げる良い機会を提供することができた。多くの人々は「AI」や「生物学」といった言葉は知っていても、具体的に何ができるのかを知らないことが多かったため、その漠然としたイメージを具体的な興味へと変えることができた。また、学生にとって、AIと生物学を組み合わせた新しい学問分野や研究の可能性を知ることは、将来の進路の参考になったと考えている。

今回のイベントでは、多くの方にソフトウェアを実際に触っていただき、タンパク質の立体構造を視覚的に観察する体験を楽しんでもらえた。

一方で、「AIと合成生物学」というテーマに強い興味を示したのは、参加した学生よりも、その保護者の方々だったという印象を受けた。この発見を踏まえて、今後は学生と保護者の両方に、この分野の面白さや可能性を伝えられるように改善していきたい。また、AIを説明するときにChatGPTを例に出したが、まだ使ったことがない方がほとんどであった。そのため、今後はさらに身近で分かりやすい例えを用いるなど、AIについての説明をより簡単なものにする必要があると感じた。

Summary:

AIと合成生物学の魅力を伝える教育イベントを実施することができた。ポスター発表に加え、AlphaFoldなどの体験を提供し、参加者にタンパク質の立体構造観察を楽しんでもらうことができた。一方で、学生より保護者が強い関心を示す傾向がみられ、AI技術の認知度が低かったため、十分知識を享受できなかった点が課題と分かった。今後はこれらの点を改善していく必要がある。

Material:

Toyo University Keihoku High School No.2

Theme: 東洋大学京北高校における、遺伝子組換え実験講習 第二回

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Date: 23/Oct/2024

Participant: 東洋大学京北高校高等学校1, 2年生の希望者(4人)

Elaboration:

京北高校での第2回Educationでは、前回の振り返りと、第4回の実験で用いるピペットマンの操作説明を行った。特にピペットマンは普通科の高校では用いる機会が少ない実験器具であるため、どの様な指導をすれば適切な操作を覚えてもらえるかを意識した授業を行った。

ピペットマンに関しては、メンバーが作成したイラストを用いた解説スライドを使って、基本の機能を伝えた後に、マイクロチューブ内の水を分注する練習を実際に行った。今回はiGEMメンバーの参加人数が多かったことと、京北高校側の参加者が少なかったため、ほぼマンツーマンの形式で練習を行うことができ、生徒の様々な疑問に答えることが可能であった。

ただし、ノート等をとる機会を用意しなかったため、生徒がピペットマンの扱い方を実験の時まで覚えていられない可能性があった点、指導の方法が生徒の人数が少なくかつiGEM TSUKUBAの人数が多いという状況を生かしたものだったため、Educationのシステムの確立といった面では、収穫が少なかった点が改善点として挙げられる。

Assessment:

iGEMのEducationは少人数パターンが多いかもしれないけど、今後GFESTのような大人数を相手にする場合が複数発生することを考えると、そういう時の授業のまわしかたをある程度想定しながらほかのEducationにも取り組めるとよいと思った。

特に能力のばらつきが大きい集団を相手にするときの対策は結構重要だと思う。

Summary:

振り返りを生かしたスライドによって、問いかけ等を利用しながら生徒とコミュニケーションをとることができ、実験に向けてのモチベーションを高めることができた。

実験は練習ということもあり、マイクロチューブ内の水を移動させるだけという単純作業であったが、普段高校では使わないマイクロピペットの新鮮さと、生徒にマンツーマンで指導できる環境がそろっていたため、生徒は想像以上に意欲的であった。

今回の目的はあくまで練習であるため、遺伝子組換えという点に関しては、生徒の中でとくに大きな進展はなかったかもしれないが、少なくとも実験に対する期待感や親近感を与えることはできていたように思う。

これに関しては、日程の調整(練習と実験の間が長すぎる。)や、事前準備の深堀、わかりやすい説明の仕方の追求、実験中の机間巡視や生徒への声掛けなど、 長期的かつ大人数を相手にしたEducationの実施に向けて、取り組むべき課題が見つかったなという風に感じた。(一方で、練習日から実験日までの期間の短縮や実験中の机間巡視など長期的かつ大人数に向けた課題点も見受けられた。)

Material:

Koshigaya Kita High School

Theme: 不可視対象への挑戦

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Date: 01/Feb/2025

Participant:越谷北高校1・2年生の生徒(9人)

Elaboration:

このEducationでは、文部科学省がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定する高校を対象に、科学的検証方法を体験してもらうことを目的とした。科学全般はもちろん、生物学においては直接的には目に見えないような現象を取り扱うことが多く、その実験プロセスを考案することは基礎能力として必要である。そこで今回は、内部構造が不可視である箱を用意し、その内部を探索してもらった。

また、科学では仮設を立てて検証を行い、そしてその成果を公表するところまでが求められる。そこで我々は専用の成果報告書を用意し、検証ごとに成果を書きまとめてもらい、それを掲示してもらうようにした。

当日はまず簡単なiGEM TSUKUBAおよびiGEMの説明を行った後、自由に班を作ってもらった。その後、お菓子の箱で作った「Unknown box」を各班に配布した。参加者はこのUnknown boxを自由に動かし、内部のビー玉を転がすことで、内部構造を探る。またiGEMerが準備した実験器具(定規、はかり、空の箱、分度器)を借りることが出来るが、借りる際は用途を説明したうえで、3分間のみ借りることが出来る。これは実際の実験でも、実験器具の借用には申請が必要であり、また時間的制約を課せられるからである。また器具を借りた場合は、都度その結果を成果報告書にまとめ、教室前のホワイトボードに張り出す必要がある。成果報告書には仮説や使用した器具、その使用方法、結論、現段階での箱内部の予想図を記載することになる。

各班ごとの交流も自由に行ってもらった。当日は二つの班が共同で実験を行う、というようなことも行われた。

実験後、各班から内部構造についての仮説を発表してもらった。最後には箱の中身を実際に確認してもらった。

iGEMerから「見えないものを見ることの難しさ」について再度説明を加えたうえで、Educationは終了した。最後にアンケートを実施した。

今回の参加者は全員理系の生徒で、生物分野を選択していない生徒もいたが、分野を超えて非常に活発な意見交流が行われていた。特に途中で班が一つになったり、また二つに分かれたりといった様子は、iGEMerが想定していないものだった。途中、ホワイトボードの成果報告書を確認して他班の実験を参考にする様子も見られ、成果報告書は有用に機能していた。

一方、これらテストプレイを含めた物資の準備および当日の流れの決定は実施の直前までかかった。iGEMer間の連携および対象高校との連携について、より明確な情報共有が必要だと感じた。

Unknown boxの内部構造の複雑さは難易度に直結するため、iGEMerの中でも複数回テストプレイを行いながら、構造を決定した。完成品は最初のものよりもずっと構造がシンプルになっていたが、参加者のアンケートでは適当な難易度であるという回答が多かった。

Summary:

SSH指定校ということもあり、科学について深い示唆が与えられるようなEducationを企画したことが功を奏し、抽象的なテーマではあったものの全員が活発に参与していた。絶えない議論のもとで行われる実験の数々は、iGEMerの想定を超えるものばかりであり、Educationとしても想像以上の成功を収めた。アンケートの結果からも、参加者はこのEducationを楽しいと感じており、そして見えないものを解き明かす難しさと奥深さを実感できたことが読み取れた。

一方で事前準備に関しては改善点が多かった。高校と連携する場合、カリキュラムを考慮して説明に補足を加える必要も出てくる。また高校側に提出する書類や要項、募集用紙の作成および印刷、物資の準備など、綿密な協働が必須になる。確認事項をつぶさに把握し、準備を着実に進めていくことの重要性を実感したEducationだった。

Material:

合成生物学への誘い

Theme: 遺伝子組換え技術と合成生物学について

Date: 22/Feb/2025

Participant: チームリーダーの母校の高校生(20人)

Elaboration:

本教育プログラムの目的は、高校生が合成生物学を一から理解できるかを検証することであった。日本の高等学校カリキュラムでは、遺伝子学(特に遺伝子の発現と発現制御)については共通して学習するものの、遺伝子組換えやゲノム編集などのバイオテクノロジー分野は学校ごとの裁量により内容が異なる。そのため、合成生物学の魅力を伝えるには、まず基盤となるバイオテクノロジー技術から説明を始める必要があると考えられた。今回の授業では、基盤技術の説明に続き、①遺伝子回路や代謝経路を自由に設計し、細胞の機能や構造を人工的に改変すること、②新たな生物をゼロから構築すること、という合成生物学の魅力を紹介した。最後の実践活動として、2023年度 iGEM UTokyoの「Optopass」を題材に、遺伝子パーツの並び替えと光照射の順序によって目的の遺伝子を発現させる系を再現し、生徒はDNA配列をパーツとして設計する楽しさを体感した。これによってiGEMや合成生物学についての知識を提供し、理解を促進させることができると考えられる。

本プログラムは、高校生の既存知識と合成生物学の高度な内容を効果的につなぐ構成となっていた。遺伝子組換えやゲノム編集といった基礎技術から説明を始めることで、これらに馴染みのない生徒も理解しやすいように意識した。また、実践活動として行った「Optopass」を用いたアクティビティは特に効果的であり、抽象的な理論を具体的な操作体験に変換することで、生徒の理解を深めるとともに、主体的な関心を引き出すことに成功した。観察された反応や参加態度からも、生徒は合成生物学の創造的な側面に強い興味を示していた。

Summary:

本教育活動は、高校生に対して合成生物学の基礎と創造性を効果的に伝えることに成功した。基礎的なバイオテクノロジーの知識を土台に、実際の設計活動を組み合わせることで、知識習得と体験学習の両立を実現した。生徒は遺伝子工学やゲノム編集、さらには新規生物構築の可能性について学びつつ、実際のiGEMプロジェクトを題材にした設計体験を通じて、合成生物学をより身近で魅力的な分野として捉えることができた。

Material:

4.ルーブリック

私たちは、異なるEducationの内容であっても、統一した評価ができ、次回のEducationを確実により良いものに改善できるように、ルーブリックを作成した。

今回は、ルーブリックが完成してからiGEM TSUKUBAが完全に主催した5つのEducation

  • Let’s Try It Out Laboratory No.1
  • Science High School No.2
  • Co-en
  • A High School in Tsuchiura City
  • ARATA

にて、ルーブリックを用いた評価を行った。ルーブリックを用いた評価の結果は、それぞれのEducationのページに添付してある。

ルーブリック詳細

作成したルーブリック

ルーブリックを作成した目的

1.統一した基準を用いた評価で、毎回のEducationの精度を向上させ続けるため

iGEM TSUKUBAが行うEducationイベントは、毎回異なる内容、異なる年齢層を対象にしていることが多い。毎回、イベントが終わった際には反省会を行うものの、毎回のイベント内容や対象が異なるため、その反省を次回のイベントに活かしきれずにいた。そこで、ルーブリックという統一のイベント評価基準を独自に作成し、それに沿って毎回のイベントの反省を行うことで、今秋のイベントで不完全だった部分が定量的に可視化でき、次回のEducationイベントでの改善点を簡単に洗い出すことができる。次回のEducationを確実により良いものに改善できるような仕組みを作った。

2.合成生物学を普及させるために十分なEducationの形を達成できるかを評価するため

iGEM TSUKUBAは、iGEMコミュニティに参加するチームの一員として、チーム自体がハブとなり、合成生物学に関する知識を広めることを目標にしている。合成生物学を研究するチームとして、自分たちの研究や、研究手法が正しく周囲に伝わることは、一番の目標である。ルーブリックは、iGEM judging handbook Educationの評価基準4項目を基準にし、それら項目を達成できる具体的な評価基準を独自に考えた。1相互の対話、2再現可能性、3よく考えられた活動、4多様な人々の参画、を重視したEducationを通じて、合成生物学を広めることを目指す。

3.iGEM TSUKUBAが目指すEducationの形を達成できるかを評価するため

iGEM TSUKUBAは、今回のプロジェクトにおける大目標「iGEM TSUKUBAが団体として持続的であることで、継続的に合成生物学を広めていくことができる存在になること」を掲げている。これは、iGEM TSUKUBAがつくば市を中心に活動する新しい団体として、独自に掲げた目標である。ルーブリックには、合成生物学に初めて触れる人がイベントに参入できたかどうかや、イベントにて新たな生物学コミュニティが形成されたか、また、そのコミュニティが持続的かどうかを測るための項目を設置した。毎回の評価を通して、自分たちが目指すEducationの形を追求する。

ルーブリックを使用したイベントの評価方法の手順

1 イベントが終了したら、「Education ルーブリック評価シート」内の「Education名」「担当者」「このEducationにおける大目的」を記入する。

2 ルーブリックの各項目に評価を記入する。評価は4段階。

 <評価時の注意>

 ・各評価段階に書いてある評価基準をよく読み、該当する項目を選択すること。

 ・ルーブリック左端には、「誰に強化してもらう項目か」という領域がある。ここには、iGEMer、参加者、外部関係者の三者のうち、誰がこの項目を評価するかが書かれている。特に参加者から評価を受ける項目に関しては、イベント終了後にアンケートを実施しているので、その回答状況で判断すること。ただし、当日イベントに参加したスタッフの目からみて、明らかにアンケートの回答と異なる評価が適当だとする場合には、この限りではない。

3 ルーブリックでの評価が終わったら、備考欄を記入する。①大目標を達成できたかどうか ②次回特に気をつける点 は必ず記入し、何か特筆すべき点があれば③その他備考についても記入する。

ルーブリックを作成する上で参考にした文献

1.筑波大学全学学群教職課程委員会『令和7年度 教育実習手帳』(2025),

2.All Collage Committee of Teaching Curriculum, University of Tsukuba. “Teaching Practice Handbook” (2025)

3.iGEM 2025 Judge Handbook p.49 Education

Conclusion

このように、私たちは、まず今までのEducationの活動内容を見直し、次に今後のEducationのビジョンや明確な目的を立てた。そして、立てた目標に沿った企画設計を行ない、最後に他の団体や企業と協力しながらEducationを実行した。

自分たちの目指すEducation、自分たちの目指すiGEM teamの形を活動が本格化する前にしっかりと明文化することで、具体的なゴールに向かって活動することができた。 また、Educationを行なった相手への影響を深く考えるだけではなく、各Educationイベントが終わるたびに、次のEducationに生かすことを探すことができた。これには、私たちが行ったイベントを多面的に評価する「ルーブリック」を作成したことが良い方向に導いてくれた。

今回のプロジェクトにて、新たにiGEM TSUKUBAを知り、一緒に活動を行ったつくば市内の方々や、大学内の団体と今後も連絡を取り合い、協力し合いたい。地域で活動する団体や企業が連携し、そのコミュニティ内で活動しやすい環境を作ることができれば、何倍も活動の障壁が緩和されることを知った。

iGEM TSUKUBAは、まだまだ結成してまもない団体である。これからも、今回のプロジェクトで作った基盤を無駄にすることがないよう、引き続き安定した活動を行なっていきたい。

Future Visions

他チームへの貢献:新規 iGEM team方針策定の参考に

今回のプロジェクトにおけるiGEM TSUKUBAの活動は、これから新しく結成されるiGEM teamが活動の指針を決める際、参考になると考えている。

iGEM TSUKUBAは、まだまだ歴史の短いチームである。しかし、今回のプロジェクトでは、まだ知名度がなく、コミュニティも小さな今の私たちにこそできることを考え、(以下のように)活動した。

・無理のない地道な活動を続けることで、まずはiGEM TSUKUBAが団体として持続的になること

・そのために、まずは思い切って、大学の存在する地域での活動に力を入れ、知名度をあげること

これらの方針は、特に団体の持続性に良い影響をもたらした方向転換であったように感じる。この方針にそって活動を行った結果、地域の学校や企業とコネクションを形成することでたくさんの人と出会うことができたし、iGEM TSUKUBAは生物学の研究をしているサークルだと認知してもらうことも、以前より格段に増えた。

どのiGEM teamも、始めは少人数の集まりである。大きなEducationを行えなかったり、知名度が少ないことは仕方のないことである。そこで、自分たちのiGEM teamが今置かれている状況を分析し、活動を行う前に方針を決めることは、チームを大きくしていくために必要な過程である。自分の地域にとってEducationを行いやすい場所は対面か、オンラインか。大学の広報力や施設を有効に使えないか。中高生だけでなく、大学生や大人にも合成生物学のことを知ってもらえるのではないか。など、考えられることはたくさんある。

Objectiveにて、私たちが行ったブレインストーミングの方法を記したので、Educationの方針に迷っているiGEM teamがあれば、ぜひ参考にしてほしい。新しく生まれたiGEM teamが長く続き、その地域における合成生物学のハブとなってくれることを、切に願う。

iGEM TSUKUBAの将来:安定した活動の継続

iGEM TSUKUBAとしては、今回のプロジェクトで形成した地域の企業や学校との関係性を切らすことがないよう、安定的な活動を続けていきたい。地道にEducation活動を続け、iGEM TSUKUBAの認知度を広げていくこと、そして、後代に地域の合成生物学のハブとしての役割を引き継いでいくことが、直近の変わらぬ目標である。

iGEM jamboree 2025が終了した後の、地域でのEducationの予定も決まっている。一つ一つの機会を大事にして、これからも活動を続けていきたい。

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